『エリプソス四重奏団』圧倒的に幸福な音楽の時間
ベートーヴェンの3大ピアノソナタの一つ、『悲愴』をサキソフォン4本で演奏!?
おもしろそうだなぁ・・
4年ぶりに帰ってきた、クラシック音楽祭『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 』のタイムテーブルを眺めながら、心が弾みました。
音楽祭の最終日、5月6日のプログラム
《大作曲家に楽器の制約ナシ! SAXカルテットによる名曲の解答》
19世紀半ばに誕生した「未来の楽器」サックスがベートーヴェンの「悲愴」ソナタに挑む!
エリプソス四重奏団(サックス四重奏)
・ベートーヴェン:木管六重奏曲 変ホ長調 op.71
・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番 op.13 「悲愴」ハ短調
音楽祭ならではの、こうした試みを見つけると、途端にわくわくしてしまいます。
ときとして鍵盤楽器だけに触れていると、大切な”息づかい”というものを忘れてしまいがちです。
実質、呼吸のことを考えずとも、指を置くだけでピアノは発音しますので・・
けれど、サキソフォンは、吹奏楽器。
鍵盤楽器のために作曲された楽曲を吹奏楽器であるサキソフォンで演奏したら、どんな感じになるのだろう?
ぜひ聴いてみたい!
そう思い、連休終盤の強風の吹くなか、丸の内まで行ってまいりました。
サキソフォンという楽器の持つ柔らかな色彩。
フレッシュで小気味よいリズム。
もともとサキソフォンのために書かれたのでは?
・・そう思ってしまうほど自然にパッセージが流れて行きます。
アンサンブルの楽しさと興奮。
稚拙な言葉では表しがたいのですが・・圧巻のパフォーマンス。
演奏が始まった瞬間のトキメキは、そのままに・・
惹きつけられたまま、集中は途切れることなく、気づいたら圧倒的に幸福な音楽の時間に包まれていました。
文字通り彼らが、”息を吹き込んだ一音一音から生まれた音楽”。
瞬時に生まれては、消え去って行く”音楽”と言われる芸術は、それだけに心の中に、色濃く響きます。
なんて、幸せな時間だろう。
音楽を聴いて、心の底から幸福だと思えたとき、先ずは、『生きていてよかった〜(この世に生まれてよかった〜)』と思います。
そして、それと同時に、その一瞬に出会えた奇跡に感謝しかありません。
フランスから来日してくれた『エリプソス四重奏団』。
お一人お一人に向け、精一杯拍手を送りました。
熱狂の余韻に浸りつつ・・
頑固で偏屈者のおじさん(イメージの中のベートーヴェン)の満面の笑みを想像します。
きっと、ベートヴェンだって、大満足のはず。
そんなことを思いながら、幸せな気持ちで、4年ぶりとなった音楽祭の会場をあとにしました。
エリプソス四重奏団(サックス四重奏)
Quatuor Ellipsos (quatuor de Saxophone)
2004年にナントで結成。パリ国立音楽院でメイエおよびル・サージュから指導を受けた。2007年、FNAPEC国際室内楽コンクールで第1位を獲得。古典作品から現代曲まで幅広いレパートリーを誇る。これまで、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、リヨン国立管、フランス放送フィルハーモニー管等の名門から招かれ共演。
〈※ラ・フォル・ジュルネTOKYO2023 プログラムノートより〉