音楽手帖 P3. Silent Noon 真昼の野辺
Silent Noon 真昼の野辺
©️2016 Inagi Kaori
Music,Piano,Vocal:ピコジュール
Lyrics:Dante Gabriel Rossetti ダンテ・ガブリエル・ロゼッティ〈1829-1882〉
アルバム『I want to sing to you』(2017年発売)収録曲
自作曲に付ける詩を探していて、この『Silent Noon』という詩に出会いました。
ラファエル前派の画家で詩人のロゼッティ。
画家でもある詩人の言葉をなぞって行くと、美しい彩りに満ちた情景が容易に浮かび上がるのでした。
それは、会社のお昼休みという、とても慌ただしい時間だったにもかかわらず、すっかり夢見心地な気分に浸ってしまったことを覚えています。
帰宅し、早速、この詩をメロディーにのせてみたところ、ぴたりと合い、嬉しくなりました。
野辺の草花のみずみずしい感触、芳しい風と、広がる青空。
愛が生まれようとするときの、一瞬の沈黙。
五感を満たしてゆく詩人の詞(ことば)。
なんて素敵なのだろう!
そう思い、詩人について調べてみたところ・・
彼は今でいう 『クズ男』だったと知りました。
詩人の生涯と ”クズ男エピソード” は盛りだくさん過ぎて、ここに書き切れるものではありません。
でも・・だからこそ、こうした詩が生まれるのかもしれないと、妙な納得してしまいます。
ともあれ、遠い時空を超えて、ここまで届いてくれた美しい詩。
めぐり逢いの不思議さを感じながらつくりました。
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まずは、こちらでご試聴くださいませ。
2016年の5月、ピコジュール として、初めてYouTubeに投稿した作品です。
『このサムネイルの女性がピコジュール さんですか?』と、訊かれることがありますが・・・
こちらの方は、フリー素材の”横たわる女性”です。
Silent Noon
dante Gabriel Rossetti〈1828-1882〉
Your hands lie open in the long fresh grass,
The finger-points look through the rosy blooms:
Your eyes smile peace.The pasture gleams and glooms
`Neath billowing skies that scatter and amass.
All round our nest, far as the eye can pass,
Are golden kingcup-fields with silver edge
Where the cow-parsley skirts the hawthorn-hedge.
`Tis visible silence, still as the hour-glass.
Deep in the sun-searched growths the dragon-fly
Hangs like a blue thread loosened from above.
Oh! clasp we to our hearts, for deathless dower,
This close-companioned inarticulate hour
When twofold silence was the song of love.
真昼の野辺
ダンテ・ガブリエル・ロゼッティ
訳:壺齋散人(引地博信)『壺齋閑話』より
※ 承諾をいただきCDブックレットに使用させていただいた訳です。
君は手を広げ草の上に大の字になる
指先でノバラの花を確かめながら
君の瞳は緩やかに笑い 広々とした野原の上には
大空がまばゆく広がっている
ぼくらの周りには見渡す限り
キンポウゲが銀色の綿をはためかせ
サンザシの垣根には野良ニンジンがまとわりつき
砂時計のようにゆったりと流れる時間
日の光を浴びて飛ぶとんぼが
空から垂れ下がった青い糸のようだ
ぼくらの時間にも羽が生えて 空から飛んできた
この物言わぬ静かな時間を
永遠の贈り物として胸に抱きしめよう
そうすれば その沈黙から愛の歌が生まれるだろうから