音の風景♪9月 金木犀の香る夜
朝、窓を開けて、
「あっ。」と思う。
その秋、初めての金木犀の香りが部屋の中に入り込んで来たのです。
すると、次の瞬間、身体ごと、ふわりと異次元へ誘われるような感覚に包まれます。
ゆるく漂う花の香りは、一瞬にして、ここではないどこかへ誘おうとするのです。
思えば、金木犀の香りに包まれて過ごすことは、春に桜の花を愛でて過ごすことと同じくらい特別なことではないでしょうか?
なのに、香りは秘めやかに姿を現さないせいか、桜の季節と比べたら、とても静かに通りすぎてゆく印象を持ちます。
とは言え、香りは、視覚が捉えるものよりも、もっともっと深い、本能的なところまで、降りて来ているようにも感じます。
だからこそ、一瞬にして異次元へと誘われる感覚に襲われるのです。
ここまで読まれ、『音の風景』と題しているのに、なぜ、金木犀の香り?
と思われている方もいらっしゃるかも知れませんが・・・
私は音楽を香りのように感じているところがあるのです。
音楽をつるくためには、どうしても理論や技術が必要となります。
ですが、最終的には、その音楽に香りを感じられるかどうかが大切なのではないかと思っています。
とても感覚的な言い方ではありますが・・・音楽は、それぞれに香りを纏っているように思うのです。
そんなこともあり、日本の芸道である「香道」で、”香りを嗅ぐ”とは言わず、”香りを聞く”という言い方をすると知ったときは、心の中で大きく頷いてしまった程です。
「香道」のこと、正直よく知りませんが、”香りを聞く”と、”音楽に香りを感じる”ことは通じ合っているような気がしたのです。
夜の時間が長くなるこの季節。
闇を漂う金木犀の香りに、音楽を感じてみるというのも素敵かも知れません。