音の風景 4月〜窓を開く季節のはじまり〜
窓越しに見える桜並木の淡いピンクに、心が、ほどけます。
空気がぬるくなり、窓を開けて過ごす時間が長くなります。
すると、開放感とともに、
外の音がぐんと近くに聴こえるようになります。
そう言えば、ここに住み始めたばかりの頃、外の音に慣れずに、よく泣いていたことを思い出します。
駅前の通りと桜並木が交差するこの辺り。
思いのほか騒々しく、
通りすぎる音や声の一つ一つに、いちいち怯えていました。
今だって、ときどき、音に怯えて、ビクリ!とすることがありますが、
だいぶ慣れて、たくましくなって来ました。
光のまぶしい4月の朝。
出勤準備をしながら聴こえてくるのは・・・・
<朝の窓から>
先ずは、駅へ向かう人々の靴音。
新年度を迎え、新人さんたちも混ざっているからでしょうか・・・
靴音からも緊張感が伝わって来るようです。
朝、通りを行き交う人々の歩む速度は早めです。
リズムも全体的に揃っているように感じます。
次は、近くの保育園の園児たち。
♪あるこ〜あるこ〜 ♪
と、ご機嫌な歌声。
その一方で、
『行きたくないよ〜!』と泣きわめく声。
(イヤイヤえ〜ん!)
あ〜、気持ちわかるなぁ。
大人になっても、心の中でイヤイヤえ〜ん!
会社に行くの嫌だよ〜・・・って泣いてますもの。
お母さんは、叱ったり、なだめたり、困っています。
新学期は大変ですね。
慣れるまで、少し時間がかかりそうです。
そして、日中を会社で過ごし、夜帰宅すると・・・
また、窓を開け放ちます。
通りを行き交う人々の声、靴音。
家路を辿る人々の靴音は思い思いのリズムを刻んでいます。
朝みたいに揃っていないので、気が楽になります。
自転車や、バイクの音も聴こえてきます。
そして、桜並木には、たくさんの人々の声。
桜の木々に混ざってガヤガヤとしています。
ときどき奇声があがります。
酔っ払っている人たちです。
桜がぽつりぽつりと開き始める頃から、
葉桜になるまで、
桜並木に酔っ払い。
これが現実です。
(密回避と自粛で状況が一変した昨年と今年は、
さすがに騒々しさは、だいぶ薄らぎました。)
ここまで書いて、読み返してみたら、
だいぶ騒々しい音の風景になってしまいましたね。
最後に一つだけ、
素敵だなぁ〜と思うことを書いて締めくくりたいと思います。
<夕暮れの窓から>
夜になる少し前。
空に、ほんのりとした明るさが残る夕暮れどき。
そんな時刻に帰宅出来た日は・・・
『今日は、あっちの道から、サクラ観ながら帰ろうか?
それとも、スーパーの方から帰る?』
園児をお迎えに来たお母さんの声が聴こえます。
『サクラ観ながらがいい!
だってサクラ、かわいいんだもん。』
子どもの声が、甘く弾けます。
桜のそよそよした雰囲気と、
夕暮れのグラデーションの空に
お母さんと子どもの声がとけてゆきます。
なんて甘やかで、しあわせな時間なんでしょう!
こんなやりとりを、窓の外に聴くとき、
決まって、心がふんわりとサクラ色に染まります。
4月。
窓を開く季節が始まりました。
皆さんの、4月の窓からは、何が聴こえて来ますか?