春の宵 掴もうとしても掴めない感覚

雨あがりの春の夜。
生暖かい風が吹く。

生暖かい風には、甘い花の香りが混ざり、
そして、街中にいるというのに、微かに海の香りも感じます。

その生暖かい風に吹かれると、不意に切ないような、訳のわからない感覚に襲われ、戸惑ってしまうのです。

毎年毎年、春になるたび、そんなことを感じていたのですが、
あるとき、同じように、この感覚に困惑していた詩人がいたことを知りました。

Photography by Picojoule ©️2021 Inagi Kaori

春宵感懐(しゅんしょうかんかい) 中原中也(1907ー1937)

雨が、あがって、風が吹く。
 雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵(よい)。
 なまあったかい、風が吹く。

なんだか、深い、溜息(ためいき)が、
 なんだかはるかな、幻想が、
湧(わ)くけど、それは、掴(つか)めない。
 誰にも、それは、語れない。

誰にも、それは、語れない
 ことだけれども、それこそが、
いのちだろうじゃないですか、
 けれども、それは、示(あ)かせない・・・・・・ 

かくて、人間、ひとりびとり、
 こころで感じて、顔見合(かおみあわ)せれば
にっこり笑うというほどの
 ことして、一生、過ぎるんですねえ

雨が、あがって、風が吹く。
 雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵。
 なまあったかい、風が吹く。

Photography by Picojoule ©️2021 Inagi Kaori

ふだん、まるで詩など読まない私ですが、
偶然にも、この詩に出会い、おおいに詩人に共感してしまいました。

言葉にはならない、この感覚。
毎年毎年、不意に感じては戸惑う、この感覚。

それは、これだったんだ!

やっと、わかってくれた人に出会えたようで、
深い共感が湧き上がりました。

詩人に言葉にしてもらえたことで、
妙な安心感と、無邪気な喜びさえ感じてしまいました。

掴もうとしても掴めない感覚。

詩人が掴めない感覚を、そのまま言葉に残したように、
掴めないまま、歌にしておきたいと思いました。


詩人の言葉を、なぞるようにつくりはじめ、
浅はかと思われそうですが、
ほんのわずかなロマンスのようなものを混ぜ合わせて、
『予感』という歌を完成させました。

生暖かい風が吹く、
雨あがりの春の夜を思い浮かべながら、
耳を傾けて頂けたなら、うれしいです。


予感 ピコジュール
Lyrics,Music,Photography and Video by Picojoule ©️2021 Inagi Kaori

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