音楽手帖 P4. Sudden Light

Sudden Light 突然の光

©️2016 Inagi Kaori


Music,Piano,Vocal:ピコジュール
Lyrics:Dante Gabriel Rossetti ダンテ・ガブリエル・ロゼッティ〈1829-1882〉
アルバム『I want to sing to you』(2017年発売)収録曲



・・・I know the grass beyond the door,・・扉の向こうに草地があり、
The sweet keen smell, ・・ 甘く、むせるような香りが漂い、
The sighing sound, the lights around the shore.・・そよ風が囁き、灯りが岸辺に煌いたのを覚えている。
・・・


通勤電車の中でこの『イギリス名詩選』という本を読んでいたときのこと。
一瞬にして草の匂いが立ち込めるような生々しい感覚を味わい、不意に本から顔を上げ、周りを見回してしまいました。

間違いなく、ここは、通勤電車の中で、まわりには、通勤ラッシュで不機嫌そうな表情の人々。
やけに生々しい感覚に捉われ、驚いて目の前の現実を確かめてしまったことを覚えています。



ラファエル前派の画家でもある詩人のロセッティにより書かれたこの詩。
彼が、彼の妻、エリザベス・シダルのために書き、妻の死とともに埋葬した詩集を、その数年後、棺の中から取り出し、出版したものだそう。

そのエピソードに、ぎょっとしてしまう一方で、”芸術作品”と言われるものの美しいだけではない生臭い側面を改めて感じさせられました。

詩人の生涯、そして彼を巡る女性たちについて、ここに書き切れるものではありませんが、そうしたエピソードに触れたとき、最初に感じた生々しい感覚が何だったのか、少しわかったような気がしました。

こちらも、Silent Noon と同様、偶然にも自作のメロディーに詞が合い、楽曲として仕上げることが出来ました。


♪音楽配信サイト



♪YouTubeで無料でフル視聴いただけます。
まずは、こちらでご試聴くださいませ。



Sudden Light
Dante Gabriel Rossetti

I have been here before,
But when or how I cannot tell:
I know the grass beyond the door,
The sweet keen smell,
The sighing sound, the lights around the shore.

You have been mine before,
How long ago I may not know:
But just when at that swallow’s soar
Your neck turned so,
Some veil did fall,- I knew it all of yore.

Then, now,-perchance again!・・・
O round mine eyes your tresses shake!
Shall we not lie as we have lain
Thus for Love’s sake,
And sleep, and wake, yet never break the chain?

突然の光
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
訳:平井正穂編『イギリス名詩選』岩波文庫より

※CDブックレットを制作時に訳詞掲載の許諾を頂いております

僕は以前ここに来たことがある、
だが、いつ、どんな風にして来たのか、はっきりしない。
扉の向こうに草地があり、
甘く、むせるような香りが漂い、
そよ風が囁き、灯りが岸辺に煌いたのを覚えている。

君は以前僕のものだった、ー
どのくらい昔のことか、今の僕には思い出さない。
ただ、燕が一羽、二人の傍を掠め飛んだ拍子に、
急にそちらに君が首をかしげたが、そのとき、ある
ヴェイルが一瞬二人を包んだ、ー あの昔のことは覚えている。

ところで今宵だが、ー せめてもう一度だけでも!
ああ、僕の眼にかぶさった君の髪が震えている!
かつて愛を確かめ合おうと、一緒に横になったように、
今宵も横になり、眠り、 ー だが、
眼覚めた後でも、愛の絆が続くわけにはいかないものか!





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