音の風景♪7月 七夕と星をめぐる小さな旅
雨が続き、気持ちが滅入りがちな日が続いています。
けれど、窓の外から不意に、聴こえて来た歌声のおかげで、一瞬にして、
心が和み、元気が出て来ました。
♪お星さま きらきら〜
きんぎん 砂子(すなご)〜♪
近くの保育園からの帰り道に、
小さな子どもに優しく歌うお母さんの声でしょうか。
とっても素敵な歌声です。
けれど、この歌って、何だっけ?
♪さ〜さ〜のは〜 さ〜らさら〜
のきばに ゆ〜れ〜る〜 ♪
前半の部分を自分で口ずさんでみたら、わかりました。
あ!
たなばたさま♪
思い出したら、嬉しくなりました。
毎日慌ただしくて、季節の行事に疎くなっていましたが、
七月と言えば、七夕。
七夕と言えば、笹の葉、七夕飾り、短冊。
私の住む街の小さな駅前商店街でも、毎年、数カ所に七夕の飾りをするのですが、
昨年今年は、行事自粛のせいか、七夕飾りもなく、少し淋しい気がします。
そう言えば、ここに引っ越して来て、初めての7月のある晩のこと。
少し風の吹いている日のこと・・・
シャカシャカシャカシャカ・・・・
シャカシャカシャカシャカ・・・
一晩中この音がして、よく眠れぬまま、朝を迎えたことがあります。
最初、音の正体がわかりませんでした。
寝ぼけ眼のまま、玄関脇の窓を開けて、やっと合点が行きました!
『あ〜〜〜!! これだったのか!!』
そうです。
私の暮らす部屋は、ちょうど駅前商店街の終わり付近。
部屋の真横にこの七夕飾りがつけられていたのです。
♪笹の葉、シャ〜カシャカ〜 ・・・♪
プラスチック製の七夕飾りは、一晩中シャカシャカシャカシャカ。
なかなか騒々しいものです。
賑やかなのも悪くはないけれど、
七夕の晩、出来れば、静かに星空など眺めたいものですよね。
満天の星空。
そして流れ星。
子どもの頃から憧れていました。
どうしても星の降る夜空を見てみたくて、星をめぐる小さな旅をしたことがあります。
遠くまで行く時間も予算もなく・・・
考えあぐねた結果、近県にある国立天文台に程近い民宿まで、
”星をめぐる一泊旅行”を決行しました。
お目当ての満天の星空と流れ星。
最初は、曇り空で全く見えずに、がっかり。
けれど、午前2時を過ぎた頃から、雲が去り、美しく広がる星空を心行くまで見ることができました。
それはそれは、素晴らしい星空で、いつまでも忘れられない思い出になりました。
そして、そして、もう一つ。
そのとき経験した忘れられない思い出があります。
民宿の最寄り駅に降り立たち、
電車が去って行くのを見届けたあとのこと。
何かを忘れて来てしまったような、どこか心許ないような・・・
それでいて、スッキリ身軽になったような・・・
何とも言えない不思議な感覚に陥りました。
最初はそれが何かわかりませんでした。
ストンと何かが落ちてしまったようなスッキリ感に、戸惑いすら感じました。
宿に向かううちに、それが何かやっとわかりました。
”音がしない”
その駅の付近は、静かというか、人工的な音がしないのです。
もう少し正確に言えば、電気や機械が奏でるノイズ(ホワイトノイズというのでしょうか?)が聞こえないのです。
地域にもよるのかもしれませんが、現代であれば、大抵、生まれたときから、
電気、電化製品、機械類のノイズにまみれて生活しているのではないかと思います。
冷蔵庫の唸る音がうるさくて眠れないとか、そういうことはあるかもしれませんが、
もう殆どノイズは、身体の一部のように耳にこびりついているのだと思います。
無意識のうちに、生まれたときから絶えず聞いていたノイズがない。
ストレスフリーな、あの耳の感覚。
いまだに忘れることが出来ません。
満天の星を求めて訪れた国立天文台の一帯は、
星の観測に必要な暗闇を確保するためなのか、民家や電灯が殆どない。
”音のしない世界”だったのです。
星をめぐる一泊旅行。
あの音のしない、星の瞬く空間のこと、街中に暮らしながら、何度も何度も思い出すことがあります。
とは言え、
シャカシャカ シャカシャカ・・・
この街の愛すべき商店街の七夕飾り。
それはそれで、妙な愛着を感じずにはいられません。
さて、この季節。
雨降りの日が多いですが、雲の向こうの天の川に思いをめぐらせると・・・
天の川の西の岸に住む双子のお星さま。
チュンセ童子とホウセ童子。
今晩も仲良く、銀笛で、「星めぐりの歌」を奏でているかもしれませんね♪
星めぐりの歌
作詞・作曲 :宮澤賢治
絵 :八木多美子
編曲・演奏・動画編集 :ピコジュール