雨に濡れていたサクラの木のための小さなピアノ曲
春に降る雨のリズムで、小さなピアノ曲をつくりました。
Picojoule:Flower in the rain <ピコジュール:花に雨>
Music,Piano and Video by Picojoule ©︎2021 Inagi Kaori
この小さなピアノ曲は、”雨に濡れた早咲きのサクラの木の想い出”として書いたものです。
ある朝、通勤途中、その早咲きのサクラの横を通り過ぎようとしたとき、不意に、そのサクラに心がとまりました。
それは、目にとまるというより、心がとまると言った感じでした。
毎日、そのサクラの木の横を通っていたのに、そんなふうに感じたのは初めてでした。
不意に、呼び止められたような、そしてピタリと心が重なったような、そんな感覚でした。
月曜日で急いで出勤しなければならないのに、そのまま立ち去ることが出来なくなり、雨の中、スマートフォンを取り出し、何枚か写真を撮りました。
そして、その二日後・・・
そのサクラの木は、伐採されていました。
美しい花をたくさん枝につけたまま。
古い家屋に隣接した空き地のようなところに、たった一本だけのサクラの木。
諸事情があっての伐採は、仕方のないことなのだと思います。
けれど、心が痛みました。
二日前、サクラに呼び止められるようにして、雨の中で写真を撮ったことがすぐさま思い出されました。
やっぱりあのとき、気のせいではなく、本当にサクラに呼び止められたのではないかと感じました。
この写真が、そのとき撮ったものです。
そして、その後、この写真を観ながら、小さな曲を作りました。
それが、今回ご紹介する”Flowers in the rain”という小さなピアノ曲です。
ミュージッククリップの中のサクラは、この写真のサクラではなく、別のサクラを新たに撮影したものなので、イメージはかなり異なるものとなりました。
けれど、雨に濡れそぼる花というのは、どこまでも透き通っていて、なんて美しいのだろうと、あらためて感動してしまいました。
そして、しずかに水を纏って、繊細に震える様子は、あのときのサクラを思い出させます。
あの日、雨に濡れていたサクラの木のための小さなピアノ曲。
春に降る雨のリズムを感じながら、耳を傾けていただければと思います。
*冒頭の雨音と小鳥のさえずりは、編集の際、消音するつもりでしたが、あまりにも心地よいので、残すことにしました。
ため息が漏れるほど、うっとりと私までも雨に打たれる感じがしました。花びらの透き通る感じが音になった、魔法のようでした。雨に打たれ、自然に枝から離れ散る前に命を絶たれるのは花にとってとても悲しいことだったでしょう。清らかな悲しみに満ちた曲でした。ありがとうございました。
みずたまさん
この小さな曲で伝えたかったことのすべてを受け取ってくださったこと、とても嬉しく思います。
日々の情景の一瞬一瞬を、毎日大切にスケッチされているみずたまさんだからこその、素敵なご感想だと思います。
ありがとうございました。